音楽SNS Chooningを4ヶ月使ってみた結果
(5162文字 / 約10分で読めます)
2020年10月からChooningというアプリを使っています。
何かというと「Spotifyで聴いた音楽の感想や思い出を投稿できる」もしくは「みんなのその投稿を曲と同時に読める(聴ける)」というアプリです。ナニソレと思った人はまずは使ってみるのが早いと思うのでダウンロードしてみてください…笑 ↓
音楽愛で、世界を満たそう。 – Chooningは「音楽と向き合う時間をつくる」サービスです。
これが凄いなと思っていて。ストリーミング配信中心の世界で、人と音楽との付き合い方を変える(取り戻す)アプリだと思ったので書きます。
できること
- Spotifyで聴いた曲に思い出や思いや感想を乗せて300字以内で投稿できる
- みんなのその投稿を曲と同時に読める(聴ける)
- 気に入った人をフォローできる / フォローしてもらえる
- 気に入った曲をいいねするとSpotifyのChooning用プレイリストに登録されて後でまとめて聴ける
基本機能はこんな感じです。音楽付きのTwitterとか音楽版のインスタと言ったらわかりやすいかも。
すごいところ
Chooningを4ヶ月使ってみた結果、すごいと思ったことを書きます。
音楽発見装置としてのおもしろさ
まず見る側(聴く側)として楽しいです。
まずSpotifyにはレコメンド機能があり、おすすめの曲をプレイリストにしてくれたり、聴いた曲の後に自動的におすすめの曲を流してくれたりします。最初は「よく僕の好きな曲わかるなお前!すごいな!」と思って感動してたんですけどなんか最近「こいつにはこれ聴かせとけば満足するやろ〜」みたいなお決まりの曲、お決まりのアーティストばかりが流れて来てつまらなくなってきました。
そこでChooning。僕がChooningでフォローしいてるのは今のところ見ず知らずの人がほとんどなのですが、ある人のある一曲に対する熱い思いや、詳しい解説や、ほっこりするエピソードや、あるいは今日はこんな気分でこれを聴いてるよ〜みたいなのが流れて来ると、知らない人に知らない曲をおすすめされているのに、不思議とその曲(その人自体にも)興味が出てきます。この、人の体温を感じる音楽体験ってAIにはできないなぁと思っていて、ここがSpotifyや他のストリーミング音楽サービスだけでは味わえない魅力だと思っています。
記憶再生装置としてのおもしろさ
好きな曲を投稿してみるともっと楽しいです。何か一曲書こうとするとたぶん自分の好きな曲とかから投稿することになると思います。そうすると「なんでこの曲好きになったんだっけ?」「そうそう学生の頃あの人に教えてもらったんだっけ」とか「あのライブで聴いた時は最高だったな」とか「あの道を歩きながら聴いてたな」とか「あの部屋で聴いて泣いたな」とか「あの人が聴いてたな」とかもういっぱい思い出すんですよね。情景から匂いまで思い出してしまう。これがおもしろくて。記憶ってすごいな、音楽ってすごいなってこの数ヶ月投稿していく中で何度も気付かされました。
好きな音楽について語れる場のおもしろさ
僕は好きな音楽を聞いた時やライブに行って音楽熱が高まってきた時に誰かとその思いを共有したくて、誰に伝えるでもなく一人ブログを書いたりしていました。でもブログだと量的にも質的にもある程度の文章を書かなければいけないという心理的なハードルがあり、ここ最近は書く機会も減っていました。
Twitterだとフォローし合っている方々の興味のない音楽の話を急にしてしまうと皆のノイズになってしまうと思い語れずにいました。そんな時に「あなたの好きな音楽のことについて好きなだけ語ってね」という場が与えられたので、水を得た魚のようにいろいろな曲について書きました。今まで自分が聴いてきた曲にそのエピソードなどを書き込んで保存していく行為は、まるで人生の棚卸しをしているような気持ちになりました。自分の生活はこんなにも音楽と共にあり、支えられていたんだなとしみじみ思いました。
音楽の紹介だけであれば、最近だとインスタグラムでも同じような機能があります。ストーリーズにSpotifyの曲を付けて紹介できるというやつです。でもインスタだと音楽に興味のない人もたくさんいたり、そもそも消音で見ている人も多いので紹介しても聴いてもらえないことの方が多いです。
Chooningにいるユーザーさんは音楽と出会うことを目的としているので、知らない人が紹介した曲でも聴いてくれるし、その投稿を好意的に読んでくれることが多いのがすごいところだなと思っています。
アプリやサービスって実現する技術や機能よりも、制作者の方の思想や、ルール(遊び方)の提案やそこに集まるユーザーの性質などなど、場所の作り方や見せ方の方が重要なんだなーとChooningを使っていて思いました。リアルタイムでより良く改善されていくUXUIや開発の裏話などもnoteやPodcast、Clubhouseなどで詳しく語ってくれているので、デザイナーさん、エンジニアさん、何かサービスを作りたい人にとっても「サービスってこんな風に大きくしていくんだな〜」という勉強になっておすすめです。
音楽愛で、世界を満たそう。 – Chooningは「音楽と向き合う時間をつくる」サービスです。
SNSとしてのおもしろさ
音楽SNSと呼ばれたりもしていて、SNSとしての楽しさもあります。これは実際にあったことなのですが、ある日あるユーザーさんが仕事のエンジンがかからず「今日はもうダメ」という内容で曲を投稿していました。お気に入りに入れて、その後プレイリストで自分もその曲を聴きながら仕事していると、だんだんと同じ気分になってきて「今日はもういいや」となってしまいました。その人のいる部屋の空気感や気分までもが自分の部屋に入り込んできた気がして、これってすごい体験だなと思いました。そのことをChooningに投稿してみると、翌日同じユーザーさんが今日はこんな気分だよという曲をエアリプのように投稿してくださってほっこりしました。音楽を通じたゆるい繋がりがすごく心地よくておもしろいなと思っています。
音楽と向き合う時間のおもしろさ
僕は未だに好きなアーティストのアルバムがリリースされるとCDを買っています。なんでそんなことをしているかというと、アルバム一枚にお金を払うことで、一曲一曲を大切に聴けると思ったからです。過去にストリーミングサービス(AppleMusic)を使い始めた時に、どんな曲でも聴けて便利だと思った反面、色んな曲を聴かないともったいない気がしてきて、次々と新しい音楽を使い捨ててポイ捨てしているような感覚がありました。そんな音楽との向き合い方が嫌になってサービスを解約し、ストリーミングサービスと距離を置いていたという経緯があります。
それから数年後にSpotifyの契約をして、大切なアーティストはCD、それ以外はストリーミングという風に使い分けていました。そんな中で僕がChooningを使い始めたのは、このサービスの開発者さんが匿名で投稿されていた日記を読んだのがきっかけでした。この開発背景に首が折れそうなぐらい頷いてしまったのでそのまま全部引用します。
開発背景(このプロダクトをつくった理由)
ぼくはSpotifyを利用しており、本当に膨大な音楽を聴くことができるようになったが、その反面、CDを買って(レンタルして)きていた時代と比べると、楽曲やアルバムに対して深い感情を抱くことがなくなってしまったなあと感じるようになっていた。部屋で聴いている音楽が、データという存在の域を出ず、自分の部屋に入ってきてくれない。音楽を聴いているが、素早く消費しているだけのような気がして、曲と自分の間の関係が希薄になりつつある気がしている。これはストリーミング・サービスの利用によるものなのか、加齢による感受性の低下なのか判断がつかないが、前者が理由と仮定して作ってみたのが今作だ。
ストリーミングで聴いた音楽について、自分の思いや感想を書き起こす時間を設けること。投稿が自身のタイムラインにコレクションされていく様子は、高校時代に部屋の棚にCDを飾っていたときを思い出す。Spotifyを「たくさんの音楽と出会う空間」とするならば、Chooningは「出会った音楽の中から気に入った音楽を連れてきて、改めて向き合う空間」と位置付けることができる。この二つの営みは共存し、互いに影響し合うことで人間と音楽の関係を良好にしていくはずだと考えている。
【追記あり】音楽情報の共有サービスを作ったので使ってみてほしい
このサービスがあれば自分がCDを買うことで得ていた「音楽と向き合う時間」をストリーミングでも実現できるかもしれないと思いました。実際、一曲の感想や思い出を書くには時間がかかるし、投稿するに当たってその曲の歌詞、背景やそのアーティストについて調べて考察したり、曲の良さを再発見したり、味わったりする時間が多くなりました。一曲単位だとCDを買っていた時以上に向き合っているかもしれないと感じています。
文章×BGMという体験のおもしろさ
Chooningは曲の感想や思い出以外にも、曲と一緒に普段の日記なんかも投稿されていて、これも個人的に好きです。知らない人の日記なんて普通は興味が湧かないけど、そこにBGMのように音楽が流れてくるとびっくりするくらいおもしろく読めてしまうんです。それは「知らない人の知らない日記」にひとつ「曲」という共感ポイントができるからだと思います。それが「知っている曲」や「好きな曲」だったらそれだけで楽しく読めてしまいます。「知らない人の知らない日記」に「知らない曲」が流れていてもその曲がその文章にすごくマッチしていて、一瞬映画でも観ているような気分になったこともあります。テレビや動画やお店では、その場の気分を作るためのBGMが使われるのが当たり前になっていますが、その場面にマッチするBGMと同時に文章を楽しむ体験というのは今までになかったかもと思い、ここに音楽SNSという枠組み以上のおもしろさと可能性を感じています。
制作者さん達の音楽談義のおもしろさ
ChooningはSpotify上に不定期でPodcast(ラジオ番組のようなもの)も配信しています。開発者さんや編集長さんがパーソナリティをされていて、そこに番組の構成作家さんやゲストの方も参加したりしながら、各々の音楽との付き合い方や音楽との思い出を語り合っています。音楽理論や音楽レビューを専門的に語るわけではなく、その人の人生に紐づく音楽とその思い出を語っていて、音楽に詳しくなくてもおもしろく聴けるのが良くて毎回楽しみにしています。
今後期待してること
Chooningに今後期待していることについて書きます。
アーティスト、音楽家、音楽ライター、作家、有名人の方々が入ってくるとさらに楽しくなりそう
有名なアーティストさんや有名人の方がChooningに入ってくると、あの人こんな曲好きなんだ!あの人のルーツにこんな曲があったんだ!ということが知れるファンにとっては夢のようなツールになる気がしています。Chooningの魅力は文章と同時に音楽を聴けるところなので音楽ライターの人とかもChooningで投稿してみると今までにない読まれ方をしてもらえるし、そういう専門家的な人の投稿もたくさん読んでみたいなと思いました。クリエイターの方々もTwitterやインスタで音楽を紹介していることが多いので、そういう有名な人々が増えるとその人の投稿を読みたいファンの方々も続々と入ってくることになるはずなので一気に賑やかになりそうです。
特定のアーティストファン同士で繋がると盛り上がれそう
僕はヲタクと言えるほど椎名林檎さんが好きです。そういった推しアーティストのファンの情熱ってすごくて、そのアーティストへの思いとか、私はこの曲で好きになったとか、一番好きな曲はこれで…みたいな熱い投稿で溢れると盛り上がりそうだし、そういう特定のアーティストのファン同士で繋がれると幸せになれそうだなと今からわくわくしています。今後アーティスト検索等の機能追加も予定されているそうなので、ファン同士で繋がったり自分の知らない界隈の曲やコミュニケーションを覗くことができそうで楽しみです。
新しい形でアーティストを応援できそう
ストリーミング全盛の時代になり、CDがたくさん売れた時代に比べてアーティストへの還元が少ない、苦しんでいるという話をよく聴きます。しかも最近ではPodcastのような音声配信メディアや、Clubhouseのような音声中心のSNSまで次々と出現し、普及してきています。様々なサービスが人々の耳の過処分時間を奪い合っている耳の戦国時代と言えそうです…笑。そんな時代のアーティストさん達はアーティスト同士音楽のみで戦っていた時代とは違い、そういったおもしろコンテンツ達とも同じ土俵で戦っていくのかと思うと…苦難すぎますね。そこでアーティストに音楽活動を続けてもらうためには我々リスナーが曲を聴くこと(再生回数を回すこと)と同時にその曲の良さや音楽の素晴らしさを広めることだと思っています。ここまで書いてきた通りChooningはそれをやるための理想的な環境だと思っていて、この時代を生き抜く推しアーティストを救うための新しい応援の形になるのではないかと思っています。
まとめ
というわけで、ばーっと書きなぐってみました。
「ただ好きなものについて語りたい」という思いだけで書いていたらびっくりするぐらい長文になってしまいました…笑。ここまで読んでくださった方ありがとうございました。
このアプリは、ストリーミングサービスで失われた聴き手と音楽との時間を取り戻し、音楽の作り手であるアーティストの方々を救う可能性のある、すごいサービスだなと思いました。お金を儲けるためだけにサービスを作ったり、「稼げる」という理由だけでプログラミングを始めたりする人が渦巻いている世の中で、好きなものと向き合うことを起点として作られたサービスはひときわきらきらと輝いていています。この空間の中には開発者さんの音楽愛やユーザーさんの音楽愛で溢れていて、この思いがもっと届いてほしい…!
そんなわけでもっとたくさんの人にこのサービスが広まってほしくて文章を書いてみました。ryumachi3というユーザー名で好きな音楽を投稿しているので気になった方はダウンロードしてみてください〜 ↓